1章:浜辺での偶然の出会い

物語を楽しみながら、自然な英語表現を学んでみませんか?
このブログでは、短編小説を通して、ネイティブが使うリアルな英語をやさしく解説しています。

目次

キャラ紹介

本多ユキ
K大学の文学部に通う、ふつうの大学生
ミア・カルヴィエラ
T大学の環境科学専攻に通う、ちょっと変わったカナダの大学生

Chapter 1: A Chance Encounter on the Beach

The sound of the waves filled Yuki’s ears.

ユキの耳に、波の音が静かに響いていた。

なぜ「響いていた」の訳に filled が使われているの?

filled は、「音が耳の中に静かに、そして深く入り込んで満たす」ような感覚を表します。
この表現を使うことで、波の音がユキの耳にただ届いたのではなく、その場の静けさや臨場感をともなって、彼女の感覚を包み込んでいたことが伝わります。

A cool wind touched her skin.

ひんやりとした風が、彼女の肌をなでた。

The sun was strong, and the sky was wide and blue.

太陽はまぶしく輝き、空はどこまでも青く広がっていた。

なぜ「まぶしく輝き」に strong が使われているの?

たしかに「まぶしい」といえば bright の方が先に浮かびそうですが、strong は「光が強く、圧倒的で、感覚に訴えてくるほどの力がある」ことを表します。
この文では、太陽の光が単に明るいというよりも、肌に感じるような力強さや、視界を支配する存在感を描いており、strong はその力強さと圧倒感を表すのに適した語です。

Yuki slowly opened her eyes.

ユキはゆっくりと目を開けた。

She looked around and saw sand everywhere.

彼女はあたりを見回し、どこまでも広がる砂を目にした。

She was on a long beach with no buildings in sight.

彼女は長く続く砂浜にいて、建物の姿はどこにも見えなかった。

「見えなかった」は couldn’t see じゃないの?なぜ no buildings in sight が使われているの?

couldn’t see は「見ようとしたけど見えなかった」という意味です。
一方、with no buildings in sight は「建物が見えない状態で」という状況説明をしています。
この with + 名詞 + 状態 の形は「~という状況で」「~を伴って」を表す英語らしい表現です。
つまり、この表現は「その場所に建物が全くない」という風景の特徴を自然に伝えています。

“Where am I?” she whispered.

「ここはどこ……?」と彼女はささやいた。

This was not her room. This was not Tokyo.

ここは彼女の部屋ではなかった。ここは東京でもなかった。

She felt cold wind and sand on her hands.

冷たい風が肌を撫で、手には砂がついていた。

She wondered if this was a dream.

これは夢なのだろうか、と彼女は思った。

Everything felt so real — the sun, the wind, the sound of the waves.

すべてがあまりにリアルに感じられた — 太陽も、風も、波の音も。

Suddenly, she heard a voice behind her.

突然、背後から声が聞こえた。

“Hey! Are you okay?”

「ねえ! 大丈夫?」

Yuki turned and saw a girl with blond hair running toward her.

ユキは振り返ると、金髪をなびかせながら自分に向かって走ってくる少女が見えた。

なぜ “with long blond hair” のすぐ後に “running toward her” が続いているの?普通は間に接続詞や文章が入ると思うけど、省略されているの?

running toward her は「走っている」という動作を説明する現在分詞で、
本当は「a girl who is running toward her」と言いたいところを省略しています。
英語では関係代名詞+be動詞を省略して、現在分詞だけで短く表現することがよくあります。

The girl wore a checkered shirt and a mini skirt. Her face showed concern.

その少女はチェックのシャツにミニスカートを着ていた。彼女の顔には心配そうな表情が浮かんでいた。

“I saw you lying here” the girl said. “Can you stand?”

「ここで倒れているのを見かけたの。立てる?」とその少女は言った。

Yuki nodded. “Yes, I think so.”

ユキはうなずいた。「はい、たぶん大丈夫です。」

The girl smiled. “That’s good. I’m Mia. What’s your name?”

その女の子は笑顔を見せた。「よかった。私はミア。あなたの名前は?」

“Yuki” she replied quietly.

「ユキ」と彼女は静かに答えた。

Mia said, “Do you remember how you got here?”

ミアは言った。「どうやってここに来たか覚えてる?」

Yuki shook her head. “No… I just woke up here.”

ユキは首を振った。「ううん……ただここで目が覚めただけ。」

「首を振る」なのに、英語ではどうして “head(頭)” を使うの?

日本語では「首を振る」と言いますが、英語では shake one’s head(頭を振る)という表現を使います。
これは、英語では「頭(head)」が顔の向きを変える主体として考えられているからです。
つまり、「いいえ」というしぐさ=顔を左右に振ることなので、「head(頭)」を使うのが自然なんです。
日本語と英語で体の部位の捉え方が少し違うだけで、意味としてはどちらも同じ「否定のしぐさ」を表しています。

She tried to think, but her memories were blurry.

彼女は思い出そうとしたが、記憶はぼんやりしていた。

“I don’t know what’s going on.”

「何が起こっているのか分からない。」

Mia looked around. “This beach is pretty quiet,”

ミアはあたりを見回した。「この浜辺、すごく静かでしょ」

she said. “My dad’s in the car nearby. If you want, you can come with me and rest a bit.”

彼女は優しく続けた。「すぐそこの車に父がいるの。よかったら一緒に来て、ちょっと休まない?」

なぜ “you can come with me” に can が必要なの?

ここでの can は「~してもいいよ」という許可や提案をやさしく伝えるために使われています。
つまり、ミアは「来なさい」ではなく、
「来てもいいよ」「よかったら来ない?」というやわらかい言い方をしているのです。
この can があることで、強制ではなく相手の意思を尊重したやさしい誘い方になります。
日常英会話ではこのように can を使って「どうぞ〜してね」と伝えることがとても多いです。

Yuki felt nervous but safe. “Okay. Thank you.”

ユキは不安を感じながらも、どこか安心していた。「……うん。ありがとう」

She followed Mia.

ユキはミアについて行った。

As they walked, Mia whispered softly to herself, “So this is the one…”

歩きながら、ミアは小さくつぶやいた。「この子がそうか…」

Yuki looked down at her hands. The strange feeling inside her did not go away.

ユキは自分の手を見つめた。胸の奥にある不思議な感覚は消えなかった。

She thought, Maybe this is a dream. If it is, I might as well enjoy it.

彼女は思った。「これって、もしかして夢かもしれない。もしそうなら、せっかくだし楽しんじゃおう。」

「せっかくだし」がなぜ might なの?

英語の might as well は「(他にいい選択がないから)せっかくだし~しよう」という意味の決まり文句です。
これは単に let’s(~しよう)と言うよりも、迷いや控えめな感じを含み、「そうするのが合理的だし悪くない」というニュアンスを持ちます。
だから日本語の「せっかくだし」に近く、自然でやわらかい表現として使われます。

They walked toward the car, the sound of waves behind them.

二人は波の音を背にしながら車へと歩いていった。

次回: カナダでの新生活

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
次回からユキの新生活が始まります。
どうぞお楽しみに

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