幾何学的なコンピューターアートから始まった創作活動が、思わぬ方向へ進化し、数百万回再生される「感情を製造するアート」にたどり着いた。本記事では、そのユニークなプロセスと、観客の感情を巧みに揺さぶる手法について紹介します。
▶引用元:How I Turned Frustration Into Creative Success | Joshua Schachter | TED
この記事のポイント
- 制約や偶然が新しい表現を生む
- 観客の感情を意図的に操作できると気づいた
- 失敗や混乱がむしろ強い反応を引き出す
- 「満足」と見せかけて裏切る構成が効果的
- インターネットの拡散は予想外の規模に
始まりは地味なコンピューターアート
講演者は長年、ペンプロッターを使って幾何学的なコンピューターアートを制作してきました。自作のコードをマシンにアップロードし、作品をSNSに投稿しても、ほとんど反応はありませんでした。しかし、あるとき3Dチョコレートプリンターのエクストルーダーを譲り受け、それをアクリル絵の具で実験的に使い始めます。この小さな転機が、後の大きな変化のきっかけとなりました。
コンピューターで描いた線画や図形を、実際にペンを使って紙に描き出す装置のこと。簡単に言うと「コンピューター制御で紙に絵を描くロボットのペン版」
3Dプリンターなどで使われる「材料を押し出す装置」のこと
偶然から生まれた「感情の製造」
アクリル絵の具で描いたランダムなドットに対して、人々は予想外に強い反応を示しました。「順序が間違っている」と怒る人もいれば、同情したり、楽しそうに踊る人もいました。この経験から、「意図的に人々の感情を製造できるのではないか」という発想が芽生え、作品づくりが一気に変化します。
ネガティブ感情をあえて引き出す
講演者は意図的に混乱や不満を感じさせる作品を制作しました。ルール通りに進まない迷路、出口をわざと通り過ぎる映像、そして「心地よさ」を期待させた直後に裏切る展開。こうした構成は、怒りや驚きといった感情を強く喚起し、多くの人々を作品に引き込みました。
爆発的な拡散と予想外の注目
ある17秒の動画は、人々を裏切る仕掛けで200,000時間以上の総視聴時間を記録。通知が殺到し、スマートフォンのバッテリーが尽きるほどでした。視聴者の中には「これはAIアートだ」と思い込む人もおり、コメント欄は賛否両論で大いに盛り上がりました。
制約と創造のジレンマ
講演者は、制約は芸術作品を生み出すうえで重要な要素であるものの、自分の作品に対して妥協したり、創作を投げ出すと、結局は自分の作品の粗悪なカバーアーティストになってしまうと語ります。彼はその状況を良しとせず、制約を活かしつつも真摯に創作に向き合うことの大切さを強調しています。
ネットで見かけた苛立ちの種は…
最後に彼は冗談交じりに、「もしネットでちょっとだけイラッとするものを見つけたら、それは私の作品かもしれない」と締めくくります。その背後には、「感情を生み出すこと」こそが作品の核であり、それが人々の記憶に残るという確信があります。
もしこの内容を英語で伝えるなら?
「偶然の実験から、人の感情を操るアートの作り方を発見した」
創作の原点や予想外の発見を端的に伝えるフレーズ
「人々はまったく予想外の反応を示した」
観客の多様な反応や驚きを表すときに使える
「怒りや混乱が作品の一部になった」
感情を意図的に取り込む手法を説明する場面で有効
「制約は創造性を助けるが、無視すると作品の質を下げる」
制約の良さと、守らないリスクをシンプルに伝えるフレーズ
「インターネットでの広がりは想像を超えていた」
オンラインでの拡散力や影響力を語るときに使える
最後に
この講演は、偶然や意図的なフラストレーションが創造性を刺激し、視聴者の感情を強く揺さぶることで、ネット上で爆発的な拡散を生んだ過程を示しています。視聴者の期待を裏切る仕掛けによって、単なる「面白い動画」を超えた、感情を巧みに設計した新しいタイプのアート表現と言えるでしょう。