AIの性能を最大限に引き出すには、扱うデータの質がカギとなります。中でも企業内に眠る約90%の非構造化データは、活用が難しい領域とされてきました。この記事では、そうした非構造化データをAIフレンドリーに変換するためのオープンソースツール「Docling」について詳しく解説します。
▶引用元:What Is Docling? Transforming Unstructured Data for RAG and AI
この記事のポイント
- 90%の企業データは非構造化でAI処理に不向き
- DoclingはPDFや表、注釈付きテキストなどの変換を得意とする
- パイプラインを通じて構造化された出力を実現
- LangChainなどのRAGフレームワークとの統合が容易
- 処理速度も業界トップクラス(1.26秒/ページ)
非構造化データの壁とAI活用の課題
企業内の文書の多くは、表・ヘッダー・脚注・注釈・箇条書きなどを含む複雑なレイアウトで構成されており、一般的なOCR技術では正確にデータを抽出できません。これが生成AI(Generative AI)の出力品質を大きく左右してしまう原因です。複雑な構造に対応できないままAIに読み込ませると、情報の欠落や誤認識が生じ、結局人手での確認作業が増えることになります。
Doclingとは何か? その特徴とアプローチ
Doclingは、Linux Foundationがホストするオープンソースライブラリで、主に開発者をターゲットに設計されています。pip install docling
で簡単に導入でき、REST APIとしても利用可能です。文書をAI処理に適した形に構造化することを目的としており、他の一般的な文書解析ライブラリ(Unstructuredなど)と比較しても処理速度と精度の両方で優れているとされています。
パイプライン処理で“理解できるデータ”へ
Doclingの中核は、そのパイプライン処理機構にあります。文書の初期入力を元に、レイアウト解析モデルやテキスト・プロパティ抽出器を順次通していくことで、表やヘッダーなどの構造を忠実に再現した「Docling Document」へと変換されます。この出力形式は一貫したデータ構造を持ち、後続処理(特にRAG)にとって非常に扱いやすいのが特長です。
Retrieval-Augmented Generation(検索つき文章生成)の略でAIがもっと正確に、もっと信頼できる答えを出すための方法です。
ChatGPTのようなAIは、過去に学んだ大量のデータをもとに文章を作っていますが、以下のような欠点があります。
- 新しいことを知らない(学習後の出来事は知らない)
- うろ覚えで話すことがある(それっぽく言ってるだけ)
- 間違ったことを言ってしまうことがある(実在しない情報を自信満々に話す)
RAGでは、その欠点を補うために「AIが、質問に合った情報を外部の資料やデータベースから探してくる」Retrieval(検索)、「見つけた情報をもとに、AIが自然な文章でわかりやすく答える」Retrieval(検索)の2段階の処理を行います。
構造化変換による実務メリットとは?
多くの企業では、法務書類や財務レポートなど、大量のPDFファイルを扱っています。Doclingの処理を通すことで、それらが検索・要約・質問応答などの用途に最適化され、AI活用の幅が一気に広がります。しかも、従来かかっていたページごとの処理コストや時間を削減できるため、コストパフォーマンスも非常に高いと言えるでしょう。
セキュリティとガバナンスへの対応
クラウド型AIサービスを使いたくても、機密情報の外部送信が制限される企業は少なくありません。Doclingはローカルでの処理も可能なため、データガバナンスやコンプライアンスを重視する現場でも安心して導入できます。これは企業のAI活用を推進するうえで、大きなアドバンテージとなります。
LangChainやLlama Indexとの親和性
Doclingは、人気のRAGフレームワークであるLangChainやLlama Indexともネイティブ連携が可能です。Doclingの出力形式である「Docling Document」は、それらのチャンク処理やインデックス生成との相性が非常に良く、RAGアーキテクチャにおける構造化データ供給の最適解となります。これにより、高精度なAI回答が可能になります。
もしこの内容を英語で伝えるなら?
「企業データの90%は非構造化されている」
現実の課題感を伝えるフレーズ。AI文脈でよく使われる
「Doclingは複雑な文書を構造化フォーマットに変換する」
ツールの役割と利点をシンプルに説明
「クラウドに頼らず高品質なAI処理が可能になる」
セキュリティを重視する相手に響く表現
「LangChainとの統合により、RAGパイプラインに最適」
実装者や開発者向けに強く訴求できる
「Doclingは1ページ1.26秒で処理、最速との評価も」
導入を検討する相手の背中を押すファクトベースの強調
最後に
Doclingは、企業に眠る大量の非構造化データをAIで活用可能な資産へと変換するための強力なツールです。その高速性、正確性、柔軟性、そして開発者向けの機能性により、今後のRAG・AI文書処理のスタンダードとなる可能性を秘めています。扱うデータの質を高めることこそが、AIの実力を引き出す第一歩なのです。